アンドロメダの気流に乗って

胸に咲く花について

 

胸のなかに氷の刃が生えている。

鋭く尖ってつめたくてギザギザした

みずいろの氷柱みたいな刃(やいば)

日に日に氷柱は大きさを増し成長してゆく

わたしの胸をいつもギュンと苦しめる

 

ただ、彼に手を繋いでもらっている時

その氷の刃は弱り溶けてゆく。

手のひらから伝わる温かさと

心の優しさですこしずつ胸の氷が溶けてゆく

ゆっくりと、ゆっくりと

決して早くはないスピードではあるが

その瞬間だけ冷えついて張り詰めた心が緩まる

氷が溶けてゆくとともに

それは涙に変わる。

それを静かに静かにわたしは流してゆく

外出してて、堪えなくちゃいけない時は

たくさん笑って笑って笑って流す。

 

胸の氷柱が溶けてなくなると

そこにはあたたかい心臓が見える。

普通なら綺麗な赤い心臓。

だけどわたしの心臓には

黒いユリが咲いている

白じゃなくて、真っ黒なユリ

レントゲンにもうつらない

いつの間にか咲いてしまった厄介な黒い花

そのユリの毒が蜜のように溶けだして

どうするの?と訪ね蝕むように咲く

 

こうなった時、私はひとりになる

優しさから逃げるように

外の空気を吸いに行ったり

遠くを見つめたり、

一緒に居てもまるでひとりぼっちのような

気になりとても苦しくなる。

息がしずらくなる。空っぽになる

けれど、これ以上の優しさが怖くて

これ以上一緒に居たらこの痛みを増しながら

咲く黒いユリがどうなってしまうのか私には

全く想像がつかなくて、怖くて

その痛みに耐えれるかさえも分からなくて

結局、ひとりの時間を自分に与える

 

すると次第に花は冷え、

徐々に氷の刃が覆い尽くす

 

 

みんなにこの花のことは内緒。

私の悲しみは、私だけでいい

すきなひとの前ではずっと笑っていたい

私にとってのひかりを

私のせいで悲しみに染めたくない

 

大好きだからこそ、触れてはいけないもの

 

大好きだからこそ、近すぎてはいけないこと

 

 

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見つかれば名前がついてしまう罰


花とヒトとがするかくれんぼ